くどちんのリハビリ室 ~理学療法士による関節痛のケアブログ~

【疾患解説シリーズ】肩関節周囲炎ー動かすだけが正解じゃない!時期に合わせて正しい選択をすべし

肩の痛み・肩こり 関節痛・肩こり

中高年に多いとされる「五十肩」
肩が痛くて上げられない!夜も眠れない!なんてことでお困りではありませんか?

実際僕が臨床現場にいて、腰・膝に次いで多く出会うのが「五十肩(正式には肩関節周囲炎)」です。
肩の痛みに悩んでいるのは、決してあなただけではありません。

日本整形外科学会によると、五十肩は「関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化して肩関節の周囲に組織に炎症が起きることが主な原因」と説明されていますが、もう少し掘り下げていくと、「老化」だけが原因ではないことに気がつきました。

何が原因かと言いますと「手や腕の使いすぎ」で、もっと言うと「下半身や体幹の不安定性」が黒幕、というのが僕の見解です。

「老化」と諦めるのではなく、そういった原因に対してアプローチする事が大切ですが、その中で重要な事が1つあります。
それが「時期を把握すること」です。

よく患者さんから「動かした方がいいの?」「揉んだ方がいいの?」と聞かれます。
この答えは「時期による」というのが本音です。

時期よって何をするべきか?が変わるんですね。

本記事では、五十肩でお悩みの方に向けて、原因と時期を考慮した適切な対策に関して、理学療法士である僕の見解をご紹介いたします。

ぜひ、参考にしてみて下さい。

本記事の内容

 

※本記事でご紹介している対策(特に運動)は、本来専門家と動きを確認しながら行うものです。ご紹介している対策は自己責任で実施して下さい。実施した結果症状が悪化しても責任は取れませんので予めご了承下さい。

【対策】動かすだけが正解じゃない!時期に合わせて正しい選択をすべし

冒頭でも述べましたが、五十肩への適切な対策は「時期による」というのが事実です。
その人が今病態のどの時期にいるのか?によって、対策は全く異なります。

まず最初にこの点について理解をしておいて下さい。
そのため、五十肩に関しては「誰にでも当てはまる対策」というものは、厳密に言えばありません。

では、五十肩の「時期」とは何か?
解説していきますね。

【重要】五十肩の「時期」とは?【必ず把握して下さい】

五十肩の病態は大きく分けると3つのフェーズがあります。

1つ目は「炎症期」。患部で炎症が盛んに起こっている時期を言います。黙っていても痛みがある(安静時痛)のが特徴です。
2つ目は「拘縮期」。痛みはある程度落ち着きますが、徐々に腕の可動域が狭くなっていきます。

そして最後が「回復期」
狭くなっていた腕の可動性が徐々に広がっていく時期を言います。

これらの時期がそれぞれどのくらい続くのか?については、個人差が大きいので具体的な数字は言えませんが、全体としては半年〜2年程度かかるという話もあります(12〜42ヶ月と言う文献もあります)。

いずれにせよ「治癒には時間を要する」ということを知っておきましょう。

しかし、少しでも罹患期間を短くするためにできる努力はあります!
それが「時期に合わせた適切なアプローチ」です。

では、次にそのアプローチの基本的な考え方について解説していきます。

時期に合わせたアプローチ方法を解説

わかりやすくするため、以下に箇条書きでアプローチの基本的な考え方について書いていきます。

  1. 炎症期安静が基本。患部は必要以上に動かさない、血流は悪くならないようにケア(軽いマッサージやお風呂も○)
  2. 拘縮期:痛みに注意しながら、痛みのない範囲で動かしたり、肩周りのマッサージをする。
  3. 回復期:可動域を広げるため、積極的に動かしたり肩周りのマッサージをする。

・炎症期の時は、炎症が盛んなため、必要以上に刺激を入れると炎症が悪化し痛みが長引きます。そのため、この時期の腕の扱いに注意して下さい!特に夜間に痛みが強い場合は、炎症が強く起きている時期なのでより安静が必要です。

・拘縮期は、痛みの刺激が強すぎると炎症期に逆戻りする可能性がある点で注意が必要です。どんどん動かすよりもどちらかと言えば「マッサージで肩周りの筋肉が不必要に硬くならないように維持する」ことを目的として下さい。

マッサージをする場合は、脇腹や脇の下、そして胸周りをほぐすと良いでしょう。手でほぐすのが疲れる!という方はテニスボールなどを使うと寝ながらできるのでオススメです(強くやらずに、マイルドに行いましょう)。

テニスボールを使ったほぐし方についてはこちらの記事でご紹介していますので参考にしてみて下さい。

【誰でもできる】身体が軽くなるテニスボールを使ったマッサージ方法12選

・回復期は、可動域の制限だけが残っている事が多く、積極的に動かす時期です!肩だけの運動に加えて、全身運動もオススメです。肩を動かす時は、必ず「マイルドに動かす」ことから始めましょう!無理やりは禁物ですよ!

肩を痛める原因となる「背骨や下半身の硬さ」をとるような運動・ストレッチも取り入れると良いでしょう。

もちろんマッサージも有効です。運動と一緒に組み合わせるとより効率的ですね。


いかがでしょうか?それぞれの時期の対策のイメージはつきましたか?

特に炎症期と拘縮期に関しては、痛みの管理がポイントとなります。
僕の経験上、管理がうまくできないと炎症がいつまでも治らず、痛みが長引いてしまうので注意して下さい!

回復期に関してもこの点は同じで「積極的に動かしましょう!」と書きましたが、痛みをガンガン出しながら根性論で動かすのはやめましょう。

動かしていけばすぐに落ち着くような「動かし始めの痛み」ならまだ良いですが、動かしていると次第に痛みが強くなるような痛み方はNGです。マッサージ等でしっかりほぐしてから再度動かしたり、もう少し優しく動かして下さい。

もちろん理学療法士などの専門家に肩周りをほぐしてもらうのは大変有効です。
また、炎症期において関節注射によって炎症が落ち着く例もありますので、医師と相談する事も良いですね!

それぞれの時期は「混在している」事がしばしばあります。特に炎症期と拘縮期は混在している事が多く、判断が難しくなります。

その場合は、大事をとって「安静を基本として、軽いマッサージで様子をみる」という対策が良いかもしれません。

その中で、夜間の痛みや黙っている時の痛みを感じる事が少なくなれば、拘縮期にほぼ移行したと判断できるでしょう。

「いや、自分で判断するのは心配・・・」という方は医師に相談することを強くオススメします!
(知識をつけた上で、医師に相談するのが一番良いかもしれませんね)。

【原因】そもそもなぜ五十肩になるの?【僕の見解:手・腕の使いすぎ】

さて、最後に僕が考える五十肩になる原因について述べたいと思います。
この内容は、科学的根拠が裏付けとしてあるわけではなく、あくまで僕の「経験」からのお話ですので悪しからず。

さて、僕が考える五十肩の原因は「手や腕の使いすぎ」です。
デスクワークや家事、力仕事や介護などあらゆる場面で人は手や腕を使います。

通常であれば、全身が連動することで腕にかかる負担は分散されますが、身体の状態によっては過度に腕や手に力が入ってしまい、腕や肩周りの筋肉が疲労し、血流が滞った結果パンパンになります。

この状態が長く続くと、身体は血流の回復を目的として炎症を引き起こします。
これが「五十肩」の始まりです。

五十肩の患者さんの肩周りや腕を触ると腕がパンパンに張っている方が多いので、この考えは大方間違っていないと思います。
人によっては、本来柔らかいはずの手がカチカチになっている人もいます。

五十肩は、片側がなると反対側もなりやすいと言いますが、もし反対側の腕もパンパンになっているのであれば要注意です!

下半身のトレーニングも有効!【スクワットやウォーキングでもOK】

僕は、腕や肩周りが張っている人には「下半身の運動」を必ず指導しています。
と言いますのも、下半身のトレーニングをすることによって、腕や肩周りに集中した血液を下半身に流す事ができるからです。

つまり、腕や肩周りの張りを解消することができるからです!(その場ですぐに変わるのでびっくりです)。
詳細は以下の記事で解説していますので、ご興味があれば読んでみて下さい。

なぜ肩こり解消には「下半身の筋トレ」がオススメなのか?

方法はどんなものでも良いです。
スクワットをすることでもOKですし、ウォーキングでも良いです。

ポイントは「脚が疲れるくらいの負荷量」ですね。
というのも、負荷がかかって初めて血液が動き始めるからです。

軽くできるような負荷だと身体は「現状で問題ない」と判断するので、得られる効果は薄くなります。
そのため、実施する際は負荷量に気をつけて下さいね!

【まとめ】自分の「時期」を見極めて正しいアプローチをしよう!

最後に、今回のお話をまとめます。

  • 五十肩の原因は「手・腕の使いすぎ」
  • 五十肩の対策は「時期」に合わせて行う必要がある。
  • 時期とは①炎症期、②拘縮期、③回復期の3つ(治癒は半年〜2年かかるという話もある)。
  • ①炎症期は基本的に「安静」、②拘縮期には安静+可能な範囲で少し動かす、③回復期は積極的に動かす。
  • 運動は、下半身のトレーニングも兼ねた全身運動がオススメ
  • 痛みの管理に注意を払いながら対策を行おう!

五十肩は自己管理が重要となってくる疾患です。
そのため人任せにしていては、正直なかなか良くなりません。

自分はどの時期にいるのか?何に気をつけなければいけないのか?どんな動きで痛みが出るのか?
こういった細かいところを把握する事が、少しでも早く回復する鍵となります。

それまでの身体の使い方の「習慣」ではいけないことを認識するとともに、これを機に新しい「肩に負担のかからない動き方」を習得するつもりで、この疾患と向き合ってみて下さい。

すると、再発予防や反対側の発症の予防に役立つかもしれません。

また、関節痛に対しては「動き方」の他にも「食事」や「睡眠」、「思考」などの習慣も変えていく必要があると僕は考えています。

それら1つ1つの習慣を見直すことによって、より早い回復が見込めるかもしれません。
具体的な内容を1冊の書籍にまとめましたので、もしご興味があれば読んでみてください!(Kindle Unlimitedの方は無料です)