くどちんのリハビリ室 ~理学療法士による関節痛のケアブログ~

【疾患解説シリーズ】脊柱管狭窄症ー腰を「反る習慣」をやめて丸くなろう

腰の痛み 関節痛・肩こり

  • 歩いていると腰が痛くなったり、脚が痺れてくる
  • 身体を反らせると腰や脚に痛みが走る
  • 立っていると腰が痛い・脚が痺れてつらい

これらの症状は医師から「腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)」と診断されうる代表的な症状です。

腰部に関して、「腰椎椎間板ヘルニア」と並んで多い罹患率の脊柱管狭窄症の原因は「腰または腹筋が弱いから」と説明される事が多いですが、それだけではありません。

僕の経験上、『背骨の反りすぎ』が1つの大きな原因と考えています。
ゆえに、腰を反る習慣をやめる事が脊柱管狭窄症には重要な鍵である、というのが僕の患者さんへの指導です。

脊柱狭窄症は、腰部の関節や組織に変性が起こる疾患として知られています。
人の身体の組織の変性は、1日や2日で起こるものではなく、長い年月をかけて起こるものです。

後ほどまたお話しますが、長い年月をかけて起こるということは「習慣」が黒幕として潜んでいるということです。

本記事では、僕の臨床経験をもとにした「脊柱管狭窄症」の原因と対策についての僕の見解をご紹介したいと思います。
もし、脊柱管狭窄症でお悩みの方は参考にしてみてください。

  • 「脊柱管狭窄症」の診断に関しては、必ず医療機関を受診して確かめるようにして下さい。
  • 本記事でご紹介する運動は本来、安全に行うために専門家から個別指導を受けて実施します。自身の判断で運動に取り組み症状が悪化したり新たな痛みが出ても保障できませんので予めご了承ください。

本記事の内容

 

脊柱管狭窄症ー腰を「反る習慣」が原因!?

脊柱管狭窄症の原因は、日本整形外科学会によると以下のように説明されています。

加齢、労働、あるいは背骨の病気による影響で変形した椎間板と、背骨や椎間関節から突出した骨などにより、神経が圧迫されます。

脊柱管は背骨、椎間板、関節、黄色靱帯などで囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。年をとると背骨が変形したり、椎間板が膨らんだり、黄色靱帯が厚くなって神経の通る脊柱管が狭くなって(狭窄)、それによって神経が圧迫を受け、神経の血流が低下して脊柱管狭窄症が発症します。ー日本整形外科学会HP

つまり、加齢などによって背骨や椎間関節が変形・変性し、背骨にある神経が通る道が狭くなり神経を圧迫することで、症状を発生させるということです。

これは僕の考えですが、「根本的な原因」を考える時、この説明では不十分です。
加齢というワードをもう少し掘り下げていきましょう。

加齢で脊柱管狭窄症を発症するのであれば、高齢者は全員脊柱管狭窄症でなければ説明がつきません。
なぜ、脊柱管狭窄症になる人とならない人がいるのでしょうか?

それは、腰に負担をかける「習慣」があるかないかの違い、と僕は考えています。

つまり、脊柱管狭窄症は、腰に負担をかける生活習慣や動作の習慣の結果、年月をかけて(=加齢)背骨の変形・変性を招いたと解釈できます。

では一体、脊柱管狭窄症になるような習慣というのはどのようなものなのでしょうか?
次で解説します。

腰を『反らせる』習慣が原因【反り腰の方は注意】

脊柱管狭窄症の場合、『腰を反らせる』という姿勢・動作の習慣が背骨の変形・変性を引き起こし、発症に至るケースがほとんどです。

例えば、歩いている時や立っている時の姿勢、立ち上がる・振り返るなどの動作の時、無意識に腰を反らせているケースが多いですね。

姿勢で言えば、反り腰の方は要注意です。
立っているだけでも、腰に負担がかかりますし、動作の中でも腰を反りやすくなってしまいます。

本来であれば腰を反らせずにできる動作も、腰を反らせるクセによって腰に余計なストレスをかけているんですね。
その結果が「脊柱管狭窄症」ということです。

さて、脊柱管狭窄症の対策は、腰を反らせる動作を把握し腰を反らせない動き方を覚えることです。

とは言っても、常に腰を反っているかどうかを意識し続けるのは非現実的。
そこで僕の提案は「腰を反ってしまう身体の状態を整える」事です。

反り腰もしかり、腰を反らせるクセもしかり、そうしなければいけない身体の状態だからそのような姿勢・動作となっています。

そのため、トレーニングによって身体の状態を整えるのです。
そうすれば、意識をしなくても「勝手に」姿勢・動作が変わっていきます。

それでは、次から腰を反るクセを解消するためのトレーニング方法を3つご紹介しますね。
臨床現場でも使用しており、人によっては、その場で腰の痛みが軽減するケースもあるものです。

腰の痛みに注意しながら「正しく」取り組んでみて下さい。

【対策】腰を反らせる習慣をやめて「丸く」なる【リラックスだけでもOK】

具体的なトレーニング方法のご紹介に入る前に、1つだけアドバイスがあります。
それは「まずはリラックスして動くだけでもOK」ということです。

腰部脊柱管狭窄症の方の多くは、無意識に常に腰や背中に力が入っています。
その状態だと、動作の中で腰に力が入りやすい上に腰の筋肉がリラックスできず血流を悪化させます。

血流が悪化すると痛みの発生物質が蓄積し、余計な痛みを生んでしまうんですね。

また、トレーニングを安全かつ効率的に進めていく上でも「腰がリラックスした状態を知る」事が重要です。
そのためには、まず背中や腰を丸めてリラックスした姿勢をとる事を意識してみましょう!

こう言いますと「猫背になるんじゃ・・・」と心配になった方もいるかと思います。
でも大丈夫です。僕の経験上、腰部脊柱管狭窄症になるような方が背中を丸めても猫背には見える方はほとんどいません。

猫背になっているように感じるのは、あくまであなたの「感覚」の話。
そもそも背中は少し丸まっているのが正常です。

まずは、身体を脱力させるところから対策を始めましょう。
トレーニングはその次です。

それでは3つのトレーニング方法をご紹介します。
3つのうち2つは「背骨を丸める」トレーニングです。もう1つは反り腰と関係の深い「股関節」のトレーニングです。

身体を丸めるトレーニング①上体起こし

頭〜背中(肩甲骨周囲)までの背骨を丸める練習を、このトレーニングでしていきます。
回数は5〜10回1セット程度でOKです(筋トレではないので疲れない程度のセット数で行いましょう)

両脚を伸ばすと腰が反ってしまう危険性があるので、なるべく両脚は立てて行いましょう。
また、アゴが上がっている場合は、高めの枕を使用し、アゴが上がらないような姿勢(アゴが床と平行)から始めて下さい。

腰が反ったり、アゴが上がった状態でトレーニングを行ってしまうと、うまく背骨を丸める事ができなくなります。
むしろ、腰の反りを強める可能性があるので、最初の姿勢には注意を払って下さい。

頭を上げる時は、「頭のてっぺんから肩甲骨(背中)までを海苔巻きを巻くように」意識して行いましょう!
つまり、背骨の1つ1つを順番に丸めるということですね。

最初はよくわからなくてもOKです。継続していくうちに、イメージがつかめてくると思います。

もし頭を上げるのが大変という方は、両手を前なられのように伸ばしてみると良いです。
両腕を前から引っ張られているイメージで行うと背中が丸まり、上体を起こしやすくなります!(肩をすくめないよう注意!)

身体を丸めるトレーニング②わしのポーズ

こちらは「背中」を強烈に丸めていくトレーニングとなります。1回30秒〜1分1セットを1日2〜3回を目安に行って下さい。ヨガのポーズの1つで、自律神経を整える効果も期待できるポーズです。

やり方は動画で確認して頂いた方がわかりやすいと思いますので、文章では割愛しますが、ポイントだけ解説します。
ポイントは「肘は前に押し出し、みぞおち(または胸)は後ろに引く」ということです。

また両肘が離れやすいので、肘同士離さないようにして行うこともポイントです。
肘を離してしまうと、刺激を入れたい背中〜腰周りの筋肉に十分な刺激が入らなくなります。

このトレーニングも肩をすくめないように気をつけて下さいね!

かなり腕がきついポーズなので「腕がきつい!」と感じればしっかりできている証拠です。
やっている時は腕がきついですが、終わった後は腕に血液が流れ込み、肩こりなどの解消も期待できます。

みぞおちを後ろに引くことも忘れずに、肘をうまく使い背骨を丸めていきましょう!

身体を丸めるトレーニング③股関節のストレッチ

最後は股関節のストレッチです。この運動も1回30秒〜1分1セットを1日2〜3回目安に行って下さい。

腰の反りが強い方は、股関節の筋肉が短縮している方が多い傾向にあります。
短縮した筋肉をストレッチすることによって、腰の反りを軽減する事がこのトレーニングの目的です。

そのため、このトレーニングで一時的に腰の痛みが緩和する方がいるかもしれません。

ポイントは2つ。
1つ目は、前脚のスネは床に対して垂直に立てること、2つ目は後ろの足の裏も床に対して垂直に立てることです。

しっかり足を前後に開き、上のポイント2つを守って行うと、股関節のストレッチだけでなく下半身〜体幹のトレーニングにもなります。

負荷が強すぎると、腰に力が入ってしまう可能性があるので、もし腰に力みを感じたら少し足幅を狭くしてみて下さい。
あくまでも頑張るのは「下半身」です。上半身は、前足の太ももに乗せておきましょう。

どちらの足の方がやりやすいか?といった左右差を観察してみても良いですね!何か気づきがあるかもしれません(例:痛い方の股関節の方が硬いなど)。

腰回りのケアにはツールを使用した方法がオススメ!【安価だけど万能です】

「トレーニング方法はわかったけど、日常的にできるケアはないの?とにかく腰が辛い」という方もいらっしゃいますよね。
腰は自分ではなかなか揉めない部位です。

そこでツールを使用したケアをオススメします。
それが「ミカサボール」です。

僕も腰回りのケアとして日常的に使用していますが、腰回りだけでなく「全身」の筋肉をほぐすツールとして使用しています。
詳細は別の記事にて、使い方とともに解説していますので、ぜひそちらを参考にして下さい。

【臨床現場にて効果実証済み】「ながら」で全身のケアが可能なミカサボールとは?【持ってないと損です】

【無料公開】これ1つで全身のケア・トレーニングができる「ミカサボール」の使い方20選

【まとめ】腰を反らせるクセに氣付く事が大事!

では、最後に今回の内容をまとめます。

  • 脊柱管狭窄症は、腰を反らせる姿勢や動作といった『習慣』が原因の1つである。
  • 脊柱管狭窄症の症状を緩和には、腰を反らせる習慣に氣づき、変える事がポイント
  • 簡単なところで言えば「背中や腰をリラックスさせる」ことも有効
  • トレーニングでは背骨を丸めたり、股関節をストレッチしたりしましょう!

事故や転倒での骨折や交通事故での打撲などの外傷を除いては、聞き覚えのあるような整形外科疾患の多くは「習慣」が根本的な原因としてあります。

今回で言えば「腰を反らせる習慣に氣づいてやめよう」という提案でしたが、実はそれ以外にも人によっては変える必要のある習慣があります。

それが「食事」「睡眠」、そして「思考」です。
これらに対して総合的にアプローチをすることで「腰を反らせてしまうクセ」も根本にアプローチできると思っています。

もし、根本的なアプローチにご興味があれば、以下の記事をご覧ください。

【運動】【食事】【睡眠】【思考】が健康を作る〜くどちんの健康メソッド〜

また、「『習慣』がどう痛みと関連するのか?」に関しては、先月出版しました書籍の方で解説していますので、ご興味のある方は一度お読み頂ければと思います(Kindle Unlimitedの方は無料でお読みいただけます)。

今回は以上です。
ありがとうございました。